2004年2月14日(土)テレビ朝日系「ビートたけしの!こんなはずでは!!」/2時間拡大版映画スペシャルでも紹介され、一躍知名度がアップしたが、座頭市ファンには古くからその存在が噂されていた作品「盲侠・血滴子(座頭市対空飛ぶギロチン)」。
座頭市に扮するは、「勝新太郎ソックリショー」の酒巻輝男(別名:勝利太郎、または香港での芸名は勝龍)。(酒巻輝男他出演作はこちら→)
日本で剣を学び、清朝(中国)へ戻ってきた盲目の玉輝という人物設定らしく、姿・形はまったくの座頭市だが座頭市ではない。(※以降“ニセ座頭市”と表記)
日本から戻り、兄の元を訪ねたニセ座頭市は、兄が果し合いに敗れ殺された事を聞く。
実は、兄は果し合いに敗れ自害したのだが斬殺されたものと誤解し、仇を討とうと果し合いの相手である武侠家を探しはじめる。(このあたりが英語別題名THE
BLIND SWORDSMAN'S REVENGEの由来。)
一方、ニセ座頭市の兄に勝利した武侠家は、戦いの厳しさと命のはかなさに剣を折り、自害し果てたニセ座頭市の兄の残された妻子を見守りながら、生きようとする。
さらに、武勲をあげる為か、その武侠家を狙うもう一人の男(※ジャケットに写っている黒装束の男、「大酔侠」の悪役“玉面虎”の陳鴻烈=チェン・ホンリエ)と、ニセ座頭市を何故か付け狙う空飛ぶギロチンを操る男がからんでドラマは展開していく。(何故、空飛ぶギロチンを操る男がニセ座頭市の命を狙うのかが、よくわからない…)。
編集が粗っぽく、シーンごとのつながりがわかりにくい。また、本来の画面サイズと思われるシネスコサイズの左右をそのまま切ってテレビサイズにしているため、見にくいシーンも多い。
特に、ニセ座頭市がサイコロ賭博で六のぞろ目以上をだす為に、サイコロを真っ二つに切りサイコロを増やしてしまうというお約束のシーンなどでは、最後の増やしたサイコロのショットが画面から半分消えてしまっているので、何が起きたのかわからない。
しかし、それぞれのキャラにちゃんと見せ場があり、武侠家と、自らが討ち負かしたニセ座頭市の兄の妻子との切ないエピソードなども描かれる展開は起伏に富んでいる。
酒巻輝男扮するニセ座頭市の殺陣も見所。腰がすわっていないという欠点はあるが、やたら素早いその動きは、ワイヤーアクションを得意とする台湾・香港映画の殺陣にマッチしていて、単なるパロディを超えた究極の形態模写として楽しめる。
小道具を巧みに使った空とぶギロチンとの戦い、折れた剣を使い、どこか「獨臂刀」っぽい雰囲気を漂わせている武侠家同士の戦いもそれなりに見応えがある。
また、「片腕ドラゴン」で、悪の武館、鉄鉤の館長を演じた田野(ティエン・イェー)。「片腕カンフー対空とぶギロチン」で、三省武術大会を主催する鷹爪武館のウー館長を演じた余松照(チュイ・チュンヘイ)の姿が見られるのも楽しい。
勝プロや大映(角川映画)の許可などは当然とっていないであろうが、その胡散臭さと怪しさ度は満点五つ星。
残念ながら、画質はVHS並かそれ以下のレベルでVHSテープに見られるような帯状のノイズも派手にでまくるが、座頭市ファンならずとも是非コレクションしておきたい珍品盤といえよう。
(2004.7.15)
片腕カンフー対空とぶギロチンはこちら→ |