第34回(2009.01.25更新)

一大叙事詩 ゴッドファーザー鑑賞のポイント

語られ尽くした感のある「ゴッドファーザー」だが、コッポラ・リストレーション ブルーレイBOXのリリースを記念して、今一度、鑑賞のポイントを列挙してみた。

●「PartI」オープニング、書斎のシーン。ドン・ビト・コルレオーネに頼み事をするパン屋のエンツォの後ろにいる息子。このパン屋の息子は、ビトが入院中の病院に見舞いに訪れ、ビトを救うマイケルの手助けをするが、「PartIII」のマイケルのパーティ上にも同じ俳優Gabriele Torreiがパン屋のエンツォを演じ、ケーキを運んでくる。
(ビンセントの母親でソニーの愛人だったルーシー・マンシー二 Jeannie Lineroや、ジョニー・フォンティーンAl Martinoがいるのはすぐにわかる。)

●「PartI」、病院の件で頭にきたソニーに殺されたタッタリアの二代目ブルーノ・タッタリアは、ルカ・ブラージを殺す際に手にナイフを突き刺した、いかにも凶悪そうな顔の男(トニー・ジョルジオ)。タッタリア・ファミリーの末息子との事。

●「PartI」、カルロに殴られた妹コニーの顔の傷を見た短気な長男ソニーは怒りのあまり、自分の指をかむ仕草を見せるが、「PartIII」ではソニーの息子ビンセントも、マイケルの書斎でジョーイ・ザザとのトラブルを話すシーンで熱くなり同じ仕草を見せる。(親子ともども体毛もすごい…)

●「PartI」は、1972年アカデミー作品賞、主演男優賞等を授賞。
マーロン・ブランドは、54年「波止場」に続く2度目の主演男優賞授賞だったが、映画やテレビでのインディアンの不当な扱いに抗議する為、授賞を拒否。
そして、「PartII」は1974年アカデミー作品賞を連続授賞。
アカデミー作品賞に輝いた唯一の続編となった。デ・二ーロは最優秀助演男優賞を授賞したが、インタビュー嫌いのせいか?授賞式には出席しなかった。

●「PartI」、2時間34分33秒付近、ビト・コルレオーネの葬儀シーンで、マイケルの左肩に女性の顔が写っているが、これは、すぐ横に座っているビトの妻、ママ(カーメラ)・コルレオーネがカメラの反射で写りこんだもの…。一時、心霊ビデオと噂されたがカメラのイタズラ。余計なものまではっきりと見えるようになったのは画質がアップした証拠だ。
「PartI」、ドンとなっていくビト・コルレオーネを影から支えたのはママ・コルレオーネ。もし、アポロニアが生きていたらマイケルの運命も変わっていたのかもしれない。

●「PartI」、シチリア島に身を隠したマイケルのボディガードだったファブリツィオとカロ。
裏切ったファブリツィオは、後にマイケルに殺されるが、カロは「PartIII」のシチリア島のシークエンスにて同じ俳優フランコ・チッティ Franco Cittiにより再び演じられ登場する。
(ファブリツィオがマイケルに殺されるシークエンスは「特典映像の削除シーン」と「特別完全版」に収録。)

●「PartI」、ファブリツィオとカロのボスだった足の悪いドン・トマジーノは、「PartII」で若きビトが両親と兄の仇ドン・チッチオへ復讐する際に手助けをし、足を撃たれてしまう人物である。
ドン・トマジーノが足の悪い理由はこの時の怪我のせいだった事が音声解説でも語られているが、「PartI」でドン・トマジーノを演じたコラード・ガイパ Corrado Gaipa は、実際に車椅子の生活であった。
なお、このドン・トマジーノは「PartIII」で、同じくシチリア島のシークエンスでも車椅子に乗って登場する。(演じている人物は違う。)

●「PartI」、太ったクレメンザ(リチャード・カステラーノ)は、ビトからボナセーラの頼まれ事の処理も任され、ロッコ・ランポーネに裏切り者のポーリの殺し方を教える。また、マイケルによるソロッツオと悪徳警部殺害においても、マイケルに銃の手ほどきをし、イタリアン・レストランのトイレの水槽の裏に銃を隠すという重要な役割を担当する。
そもそもビトをマフィアの世界に導いたのも彼だが、ファミリー内での信頼が厚く裏社会の仕組みにも長けていたようだ。(それと料理も…)
ファミリーを強大にしていったビトの4人の仲間クレメンザ、テシオ、ジェンコ、ハイマン・ロスのうち、映画的にはテシオが一番、影が薄い(※ハイマン・ロスは「PartII」で活躍する)。 「PartI」では、これが後に伏線ともなって活きてくるのだが、映像で表現しない部分まで観客に知らしめる、(行間を読ませる)緻密で計算された脚本は本当に巧い。
ちなみに、「PartII」冒頭で、クレメンザは心臓発作で死んだとされているが、その死の真相は音声解説や特典映像にてコッポラにより語られている。
また、「PartII」当初の脚本ではクレメンザはフランクの役回りだったとも語られているが、もし実現していたとしたら…  
人生を共に切り開いていったビトの旧友たちの運命に想いは馳せる。
ロッコとクレメンザの件は「特典映像の削除シーン」・「特別完全版」に収録、ロッコ役のトム・ロスキーは、「PartII」にも同役で再登場している。空港に到着したハイマン・ロスを暗殺するのが彼だ。(ちなみに、公聴会で証言する髭の男はジョー・スピネル演じるウィリー・チッチ)。

●「特別完全版 The Godfather 1901-1959 The Epic」に付録の解説書にも記載があるが、「PartI」、ファミリーが、イタリアン・レストランのトイレの水槽の裏に銃を隠す段取りを決めるシーンで、英語原語では、ソニーはクレメンザに、"I don't want him coming out with just his dich."「マイケルが自分のディックだけ握って、でてくるようなドジはするなよ」と言っている。
ソニーの発言に、クレメンザがほんの一瞬だが、“何、言ってんだ、またこいつは…”という表情をするが、これは、拳銃やペニスの事をスラングでディック(DICK)という事から、ソニーがこれに引っかけて話したものだ。日本語吹替や字幕では表現されていない。

●「PartII」、若きビトが働いていた食料雑貨屋アバンダンドの店の息子ジェンコ・アバンダンドは、後にファミリーの相談役(コンシリオーリ)となる。ジェンコ貿易を立ち上げたのは、ビト、クレメンザ、テシオ、ジェンコの4人で、ハイマン・ロスが仲間に加わる頃の事だった。
※「特典映像の削除シーン」・「特別完全版」には、コルレオーネ一家が、入院しているジェンコの見舞いに訪れるシーンがある。また、「PartIII」でマイケルと敵対する事となるハイマン・ロスの若き日の姿も見られる。

●「PartII」、二人の若きゴッドファーザーを、時間軸を超えて対比させるという大胆な構成。
タランティーノら、後の映画作家に与えた影響は計り知れない。
当初の構想では、若き日のビトもマーロン・ブランドが演じる予定であったが、ギャラの問題で断念。 デ・ニーロは、1年以上かけてシチリア訛りをマスターし、ブランドのビトを研究し尽くしての出演となった。
パチーノとデ・ニーロは、「PartII」では直接同じシーンで共演する事はなかったが、21年後、「ヒート」(1995年マイケル・マン監督作品)にて、正真正銘の初共演を果たす。

●「PartII」、約24分過ぎのマイケルの書斎シーン、LDのスタンダードサイズ収録版では、壁にかかった肖像画に、ビト・コルレオーネ=マーロン・ブランドの顔が確認できるが、DVD、ブルーレイに収録されている天地トリミングされた画面サイズ(1.78:1)ではカットされている。
(→画像比較はこちら)

●解像度が格段に向上しているHD映像。「PartII」のマイケルの公聴会で、コルレオーネファミリーの系図が写真付で壁に貼ってあるが、何故かビトの写真だけが無い…。権利の関係か?
「PartIII」では、マイケルの書斎やビンセントの家で、机上や壁に飾ってあるビトやソニーの写真は顔が、はっきりとわかる。

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