19世紀末のアメリカ南部を舞台にした「南部の唄」は、実写とアニメを合成したディズニー初の実写長編映画として、1946年に製作公開された(国内公開は1951年10月)。
原作は、新聞記者だったジョージア州出身のジョエル・チャンドラー・ハリス(Joel
Chandler Harris)が、黒人たちの間に語り継がれていた動物寓話を新聞連載用にまとめ、「リーマスおじさんのお話」"Uncle
Remus: His Songs and Sayings."として、1880年に単行本化したもの(ジョエル・チャンドラー・ハリスは白人だが、当時の読者からは黒人と思われていた)。
黒人のリーマスおじさんが白人の子供に語って聞かせる昔話という設定は、映画でもそのまま流用され、ジェームズ・バスケット扮するリーマスおじさんの台詞も、原作通りに南部の黒人訛りで会話をしている(ようだ…)。
日本でも邦題「ウサギどんキツネどん」として出版されていた。ウサギどんがブレア・ラビット、キツネどんがブレア・フォックスだ。※ちなみにBr'er
FoxのBr'er(ブレア)は、Brother(ブラザー)の南部の黒人訛り。
主題歌の「Zip-A-Dee-Doo-Da」は1947年度のアカデミー賞歌曲賞を受賞。
リーマスおじさん役のジェームズ・バスケットは、ベテランのヴォードビリアンでキツネどん(ブレア・フォックス)の声も担当。また、この映画での心に残る役作りを評価され、1947年度のアカデミー賞特別賞を受賞している。
父親の仕事上のトラブルで、母親の実家である南部の農場で暮らす事となった少年ジョニー。寂しく悲しいジョニーを元気づけたのは近所のリーマスおじさんが話してくれる楽しい昔話で、ジョニーはリーマスおじさんが大好きになってしまう。
しかし、あまりにもリーマスおじさんになつくジョニーを心良く思わない母親は、リーマスおじさんをジョニーから遠ざけようとする。そして、農場を去ろうと決意するリーマスおじさんに気づいたジョニーは、思いもかけない行動をとってしまうのであった…。
ディズニーランドのスプラッシュマウンテンは、この「南部の唄」のアニメ部分の3つの動物寓話「ウサギどん
家出の巻」「タール人形の巻」「笑いの国の巻」を元としたアトラクションである。
特に、このアトラクションのハイライトであるイバラの茂みの滝つぼへの急降下は、自分の棲家であるイバラの茂みに嫌気がさし家出をしたウサギどんが、仲の悪いキツネどんに捕まってしまい、「あのイバラの茂みにだけは投げないでくれ!」と嘘をついて、まんまと逃げ出すことに成功するというエピソードをモチーフとしている。
本当のやすらぎは、実は自分のそばにあった、という教訓がこのイバラの茂みの滝つぼへの急降下となるわけで、急降下後のアトラクションのエピローグも、この映画を見ていれば、また面白さも増すというものである。
しかし、残念な事にアメリカでは、この「南部の唄」はディズニー社の自主規制により1986年の再公開を最後に公開される事はなくなってしまった。 |