第35回(2009.02.08更新)

少年猿飛佐助とルーク・スカイウォーカー

「少年猿飛佐助」 (併映:「雪之丞変化」※実写)
「白蛇伝」に続く東映動画の長編漫画映画の第2作。シネマスコープ(東映スコープ)作品。
83分、製作日数15ヵ月4日。
1960年度ベニス国際映画祭児童映画部門 聖マルコ獅子賞 (グランプリ)受賞、芸術際参加作品、文部省選定、優秀映画鑑賞会推薦。

カラー長編初の時代劇アニメである東映作品「少年猿飛佐助」は、1959年(昭和34年)12月25日に国内公開され、1961年には「白蛇伝」「西遊記」とともに、米国で公開され、米国で初めて公開された日本のアニメーション作品とされている。

ご存知「スター・ウォーズ」は1977年公開。(ジャケットはこちら→)
有名な話ではあるが、ジョージ・ルーカスは「アーサー王の伝説」「フラッシュ・ゴードン」「隠し砦の三悪人」(1958年)などからインスピレーションを受け「スター・ウォーズ」を創ったと公言している。特に、日本映画からの影響を色濃く受けているのは、まず間違いない事である。

ジェダイの騎士は"時代劇の武士"で、ライトセーバーは"日本刀"。ルークの服は"柔道着"で、オビワン・ケノービのオビワンは"柔道の一番の帯である黒帯"、フォースはニンジャの忍術。そしてルーク・スカイウォーカーの名前、スカイウォーカーは、猿飛佐助“猿のように空を飛ぶ”という猿飛を英訳したものだという説まである。(ちなみに、ルークはルーカスからきたもの)

 
 
画面サイズ: 2.35:1 本編83分 チャプター付 
劇場予告篇(4分26秒)収録 アートギャラリー(モノクロスチール10枚収録) 
2002年7月21日 東映ビデオ DSTD02107
 


古今東西、和洋問わず、ヒーロー物のお約束パターンは、「旅立」「挫折」「復活」「帰還」といったストーリー展開が主流ではあるが、スター・ウォーズの流れは「隠し砦の三悪人」というよりは「少年猿飛左助」そのままだ …。
スター・ウォーズ「帝国の逆襲」で、それは確信に変わった。

猿飛佐助=ルーク・スカイウォーカー、ダース・ベイダー=夜叉姫、佐助の姉おゆう=レイア(※「隠し砦」の雪姫キャラが元ネタなのは明らかだがストーリー上の位置づけが似ている)、真田幸村=ハン・ソロ、三好清海入道=チューバッカ、戸沢白雲斎=オビワン&ヨーダ、ばったの三次とおけらの金太=C3POとR2D2、モフ・ターキン=山嵐の権九郎とキャラがかぶったのだ…。


「少年猿飛佐助」

初見はテレビ放送。
デパートの屋上にあった、"双眼鏡のような覗き窓から見る受像機入りの箱"でも観た記憶が残っているが、個人的に、この夜叉姫がトラウマ。

 


とにかく、これが怖かった…。

 
鬼女のような夜叉姫に谷底に突き落とされた佐助が、戸隠山に住むという仙人、戸沢白雲斎に忍術の弟子入りをし、そして3年。
再び夜叉姫に挑むシーンこそ、悪が悪であればあるほど… の名シーンだ。

夜叉姫が"骸骨になって湖上を飛んで逃げる"シーンの原画を担当したのが、原画マン成りたての大塚康夫。LD封入の解説書によると"若き日の大塚氏は、映画館で大爆笑されて、暗闇の中で真っ赤になった"と記載がある。
今、見直しても十分見応えのあるシーンだと思うのだが…。
劇場予告篇収録88分(本編83分)
ジャケットサイズ4ページ解説書封入
1995年9月20日 BELL-483
東映ビデオ/バンダイメディア事業部
 


「少年猿飛佐助」は、ディズニーアニメで使われていたライブアクション方式を採用し、里見浩太郎と丘里見の実際の演技をベースにアニメ化された。
本作が公開される半年ほど前の1959年(昭和34年)の春、東映動画に入社した新人、高畑勲は、本作制作後、スタッフ自身へのアンケート評価を行っている。(高畑勲は、新人の頃から意欲的だったという。)

その結果は『技術的には前作「白蛇伝」よりも進歩しているが、内容的には「白蛇伝」の方がすぐれている』というものだった。

現在の目で見れば確かにスローな展開であるが、キャラクターの心理描写が浅くアニメらしい誇張した表現も無く平板、という本作の評価を、すでに当時のスタッフ自身が下している事に、今をときめくジャパ二メーション、日本アニメの隆盛につながるパワーを感じる。

たとえ、ベニス国際映画祭でグランプリを受賞しようとも、日本の長編アニメはまだまだ黎明期であったのだ。
アニメとしての面白さを追及し、挑戦し続けようとする東映動画のスタッフに、かの宮崎駿が加わるのは本作公開から約3年後の1963年の事。
そして、1968年には若き大塚康生、高畑勲、宮崎駿らが、日本アニメ史上もっともエポックメイキングな作品とされる「太陽の王子 ホルスの大冒険」を創りあげるのであった。

ちなみに、ジョージ・ルーカスが「少年猿飛佐助」を観たかどうかは、定かではない。

 
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