●空飛ぶ戦艦か!火口より生れ地球を蹂躙する紅蓮の怪鳥ラドン 監督:本多猪四郎、特技監督:円谷英二、1956年度作品。東宝イーストマンカラー総天然色による初の怪獣映画「空の大怪獸 ラドン」。 根底には、「ゴジラ」同様、核への恐怖のメッセージが流れているが、その恐怖をストレートに体現させる破壊主としての登場であった「ゴジラ」と比べて、「ラドン」は違う…。 突然変異として生まれてしまった自らが核の犠牲者であり、ただ生きる為の本能による行為が、破壊につながってしまう巨大すぎるゆえの悲劇の怪物がラドンである。 大自然がその秩序を取り戻すかのように、阿蘇の火口へラドンを呑み込むあまりにも有名なラストシーン。 操演のピアノ線が炎により切れてしまった為、片方だけのピアノ線による操演の結果、偶然に生まれる事となった名シーンだが、噴火と共に燃えつき身悶えながら死に逝く二匹のラドンが哀れだ。 そして、この生まれてきてしまったモンスターの悲劇は、後年の東宝怪獣映画の傑作「フランケンシュタイン対地底怪獣」や「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」へと受け継がれていく。
映画前半は九州の炭鉱に現れた等身大の怪物メガヌロンを中心に展開される。狭く息苦しい炭鉱内で起こる怪物メガヌロンの殺戮は、ラドン登場の伏線ともなっているのであるが、怪獣映画というよりはむしろ怪奇映画に近い。 そして、この重苦しいムードは後半のラドン登場とともに急転する。 それまで続いていた重苦しく暗い展開を一挙に解き放つ事により、空飛ぶ大怪獣ラドンのスペクタクル感を一層際立たせる、その陰と陽、静と動のコントラストは見事である。 また、カラー作品という事を充分意識し、暗闇や夜間のシーンが多い前半と、青空と炎のシーンが多い後半の色彩設計も東宝初のカラー怪獣映画の名に相応しい出来栄えとなっている。
軽快なテーマ曲にのり飛行機雲を形作りながら、眩しいほどの青空を超音速のスピードで飛行するラドンと、迎え撃つジェット機の追撃戦。爆撃により傷ついたラドンは西海橋を破壊し博多に飛来する。 そして、ここで脅威のミニチュアワークで完成されたラドンによる博多破壊シーンが見られる事となるが、ラストの執拗に繰り返される単調な爆撃シーンに比べて、このスペクタクルな博多破壊シーンをラドンの名シーンとするファンも多い。
天使のエンジェルに見えないように注意し、また人間とは逆の、逆くの字に曲がる鳥の足を再現できず、なるべく画面に写らないようにしたという苦心のラドンの造型は利光貞三。 全編を通して描かれるうだるような暑さの描写は本多猪四郎監督の盟友、黒澤明監督の助言によるものである。(2003.05.12)
THE WAR OF THE GARGANTUA“サンダ対ガイラ海外版”とカップリングリリースされた「RODAN」空の大怪獸ラドン海外版。米国再発盤DVD。(サンダ対ガイラ海外版はこちら→) コード1。THE KING BROTHERS Present クレジット表記、本編72分16秒版の海外編集バージョン。過去にリリースされていた海外版と同内容だが、オリジナルの4:3スタンダードサイズの天地をカットしたビスタスクイーズ仕様にて収録されている。 オリジナルモノ英語吹替音声収録。 オリジナル国内劇場公開版も収録されているが、海外版と同じくオリジナルの4:3スタンダードサイズの天地をカットしたビスタスクイーズ仕様にて収録。 ※元は東宝DVDマスターのようだが、これはこれで貴重かも…。 日本語音声(モノ)、英語字幕(ON・OFF)収録、チャプター付。 特典映像として、"BRINGING GODZILLA DOWN TO SIZE" ゴジラを創った男たち的ドキュメンタリー収録(68分56秒) 。 Classic Media社統一のポスター等をコラージュしたメインメニュー。(2009.05.06)
映画本編で使用された音楽全曲と、別テイクや効果音など収録可能なすべての音源が収録されているサントラ盤全曲収録版。 作品解説、音楽概要、全バックミュージックの解説、楽器編成、楽曲リスト、用語集、伊福部昭プロフィールとコメント、作品データ、貴重なスチールなど資料的価値の高い解説書付。 人工着色のロビーカード、プロマイド風の素晴らしいジャケットワークは田宮教明氏。スピードポスターを流用した帯のデザインも秀逸。全12集とも現在廃盤。