野良犬 (2010.11.06)
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何だかもっといやなことが起こりそうな気がするんです…
ピストルをすられた新米刑事村上に覆いかぶさるようにたちこめる大きな雨雲。
後楽園球場の巨人対南海戦。5万人の大観衆の中からたった一人の男を探しだすというこのダイナミズム。

焦燥感におそわれる村上をよそに、盗まれた拳銃で行われてしまう凶行。
犯罪に巻き込まれ、やり場のない怒りに震える被害者家族の絶望感。
呵責にさいなまれ、悩み苦しむ村上のこのリアリズム。

聞き込み捜査から浮かび上がる一人の復員兵。
駅の待合室で顔を知らない犯人を探し出すこのスリリング。

1949年、終戦から4年。混沌とした東京をバックに、警官がピストルを盗まれた実際の事件をヒントに、ドキュメントタッチで描かれる黒澤明初期の傑作「野良犬」…

血気はやる新人刑事村上(三船敏郎)。
若き村上をさりげなくリードするベテラン刑事佐藤(志村喬)。
二人の対比は、後の刑事ドラマなどで定番となるバディ物、師弟関係のルーツともなった。
また、同じ境遇の復員兵でありながら、犯罪に手を染めてしまう遊佐新二郎と、実直で責任感の強い村上刑事との対比も描かれる。

そして、ラジオから流れる情熱的なラテン系音楽「ラ・パロマ」をバックに土砂降りの夕立ちの中、凶弾に倒れる佐藤刑事のシークエンス。のどかなピアノの練習曲「ソナチネ」、遠くに子供達の唄う童謡「蝶々」が流れる中、泥まみれになって行われる村上刑事、執念の逮捕劇。
前々作「酔いどれ天使」(1948年)で試し、その効果に自信を持った“対位法”が繰り返し使われ、見事な効果を上げている。
この“対位法”は後の「生きる」「天国と地獄」等でも使われ、黒澤明監督得意の手法となる。

うだるような暑さの中、おとり捜査で街をさまよい歩く村上刑事。当時の闇市を隠し撮りし、自ら三船敏郎(村上刑事)の代役を演じたのは、本作から5年後に「ゴジラ」(詳細はこちら→)を撮る事となる、監督補佐の本多猪四郎。
後の黒澤作品の大きな特長となる望遠レンズが初めて使用され、また黒澤明と脚本家菊島隆三が初めて手を組んだ作品としても知られている。

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LD GALLERY
●国内ニューマスター盤LD
1993年5月1日
東宝<TLL2407>

黒澤作品を数多く手がけた撮影監督・斉藤孝雄氏監修のハイビジョン・テレシネマスターによるLDリリース。
ギラギラした黒澤映画らしい、コントラストの強い画質が特長の黒澤ライブラリー。

本編オリジナルスタンダードサイズ(1.33:1)収録
LD2枚組3面仕様。ジャケットサイズ復刻版ポスター、4ページ解説書封入。
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●野良犬
1993年発売告知パンフレット
1993年5月1日「野良犬」初のLDリリースに向けての告知パンフレット。
予告篇集ディスク、復刻版パンフレット、メイキング集など豪華プレゼント特典有り。
→プレゼント特典はこちらをクリック
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●STRAY DOG
THE CRITERION COLLECTION LD
1998年10月6日
米国クライテリオン盤LD
<CC1525L>

本編オリジナルスタンダードサイズ(1.33:1)収録、122分。 LD2枚組3面仕様。
映像はボイジャー社独自のテレシネマスターによる収録で、国内ニューマスター盤LD<TLL2407>よりもコントラストが抑えめで明るい。
フィルム・ノワール風のジャケットが渋い。
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DVD GALLERY
●東宝国内単品盤DVD
2003年1月21日<TDV2683D>

単品盤のみの専用ブックケース入り仕様。
本編オリジナルスタンダードサイズ(1.33:1)収録、122分11秒。
可能な限り画像・音声の修復をおこなったという本編映像だが、オリジナルフィルムの状態がよくないのだろう、修復しきれないキズやノイズがまだまだ散見している。
だが、画質自体はコントラストの強かった国内盤LD<TLL2407>とは比較にならない程向上。解像度も高く、フィルムライクでかなり見やすくなっている。

シナリオに沿ったムービングチャプター、豪華解説書(国内ニューマスター盤LD封入解説書に掲載されているものと一部同じ)、日本語字幕付、ピクチャーディスク仕様。オリジナルモノ音声収録。
「野良犬」の劇場予告篇は現存していないため未収録。

特典映像は本DVDシリーズ特典「黒澤 明〜創ると云う事は素晴らしい〜黒澤明、小説を書く」(32分40秒)メイキングドキュメンタリー。
「野良犬」は、当初「メグレ警視シリーズ」等で有名なジョルジュ・シムノンのファンであった黒澤が犯罪小説風に小説体で書き上げ、それを新たに映画のシナリオに直すという手法がとられた。この方法は、「野良犬」のスピーディな映像構成創りに大きく役立ったという。
※ちなみに、40日で描かれた小説をシナリオに直すに50日もかかってしまったとメイキングで語られているが、心理表現が簡単に出来る小説とは違い、シナリオではそれを映画の時間の流れとして表現しなければならず、相当苦労したと黒澤は語っている。
また、舞台をやりたかったのに映画に出演するはめになってしまい、撮影中終始スネていた事が結果的に自然な演技につながったという並木ハルエ役の淡路恵子の話。
その他、オープニングタイトルバックの犬の撮影エピソード、おとり捜査で街を歩く村上刑事がシルエットの娼婦を見るシーンなど、興味深いエピソードが多数紹介されている。

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●STRAY DOG
THE CRITERION COLLECTION
2004年5月25日
米国クライテリオン盤DVD<233>
本編オリジナルスタンダードサイズ(1.33:1)収録、122分29秒。
・コード1仕様(国内のDVDプレイヤーでは再生不可)
・日本語モノ音声、黒澤作品の研究家Stephen Prinse氏によるコメンタリー収録
・英語字幕付(表示ON・OFF可)
・チャプター付(※チャプターメニューが一部「酔いどれ天使」のスチールと間違っている)
・上記国内盤DVDに収録されている特典映像「黒澤 明〜創ると云う事は素晴らしい」(32分40秒)メイキングドキュメンタリーフル収録。
・16ページカラー解説書封入。

上記米国クライテリオン盤LD<CC1525L>と同じマスターを使用したと思われるクライテリオン盤DVD。東宝より支給されたマスターの問題だろうが、上記東宝国内盤DVD<TDV2683D>よりも明るく平板で、画質的には劣る。
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Blu-ray GALLERY
●国内盤ブルーレイ[Blu-ray]
2009年12月18日<TBR19230D>
コントラストが抑えめでフィルム的質感が特長の東宝ブルーレイ。

オリジナルフィルムの状態が良くないと思われる「野良犬」。
確かに細部の解像度は高くなっているようだが、上記東宝国内盤DVD<TDV2683D>と比較しても、それほどの高画質感を受けない。
いくら高解像度ハイビジョンといえども、マスターの状態が、いかに画質の良し悪しに影響を及ぼすかという事だろう。

また、ブルーレイ「用心棒」ジャケット裏の解説にも違和感を感じたが、本ブルーレイ「野良犬」ジャケット裏の解説、“スリの常習犯の供述から犯人にたどり着くが、運悪く相棒が撃たれてしまう”との記載も、別に間違いではないが、どこかそぐわないと感じる。
ちなみに、2010年7月10日土)日本映画専門CHで放送されたHV版は本ブルーレイと同一マスター。

映像/本編2時間2分28秒(122分28秒) 1080P HD MPEG4-AVC
音声/オリジナルモノラル(リニアPCM)
※リニアPCM収録により音声がグレードアップ
字幕/日本語字幕収録
・ポップアップメニュー、チャプター付
※特典映像未収録(「野良犬」の劇場予告篇は現存しない)
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VHS GALLERY
●東宝初版VHS
日本映画傑作全集
198?年<TND1539>
●東宝ハイビジョンマスター版VHS
1996年11月1日
<TG6188S>
●STRAY DOG
(米国初版?)
1998年 SONY
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