1897年に出版されたブラム・ストーカー(1847年-1912年)原作「吸血鬼ドラキュラ」の映画化権を獲得できないままフリードリッヒ・ウィルヘルム・ムルナウ(1888年-1931年)が、役名と場所を変える事により、なかば強引に映画化した1922年の元祖ドラキュラ映画「ノスフェラトゥ」。結局、ムルナウの創ったこの映画「ノスフェラトゥ」は、内容的にほとんどブラム・ストーカーの原作と同じであった為、遺族であるストーカー夫人フローレンスより著作権侵害で訴えられ、約3年の裁判の結果、敗訴。映画公開の中止いわゆるお蔵入りとなっただけではなく、フィルムの破棄をも命じられる事となり、永遠に葬りさられる運命の作品となったのである。 しかし、いつの時代にも見てはいけないというものは見たくなるという人間の心理と、この作品に対する製作者達の思い入れが一致したのか、破棄を免れた一部のフィルムが今でいう海賊版として、原作の著作権保護期間(法的にはアメリカ・ドイツは死後70年)が切れる1982年まで保管され続けた。そして、その後の映像作家に影響を与え続けていたのである。 この「ノスフェラトゥ」という作品には、こうした幻となるべき運命をくぐりぬけてきたあやうい歴史と、作品自体の怪奇ロマン的な内容とが相まって、より神秘的なイメージがうえつけられたのである。
●シャドウ・オブ・ヴァンパイア 国内盤DVD 2002年2月20日 ポニーキャニオン プロデュース/ニコラス・ケイジ 監督/E.エリアス.マーハイジ 脚本/スティーブン・カッツ 本物の吸血鬼だったという設定のマックス・シュレック/ノスフェラトゥを嬉嬉として演じているウィレム・デフォー、映画にとりつかれた狂気の監督ムルナウを演じるジョン・マルコヴィッチ。 吸うか吸われるか(食うか食われるか)という二人の駆け引きと対決が見もの。