犬神家の一族 →ハイビジョン画像比較へ (2008.01.20)
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「ご臨終でございます…」
画面が暗転 し、大野雄二作曲の美しくも切ない「愛のバラード」が流れる。

1976年10月16日「犬神家の一族」が公開された。
角川春樹が、小説と映画と音楽のメディアミックスを自らのビジネスとして成功させるべく製作した角川映画第一回作品。メディアミックスによる大々的な宣伝手法は角川商法ともいわれ、とかく話題先行型ではあったが、実際にかなりの集客効果があり低迷する70年代の日本映画界を一気に盛り返した。
また、角川春樹の映画プロデューサーとしての卓越したビジネスセンスは、映画「犬神家の一族」の脚本にも少なからず影響を与えた。
まず、横溝正史の原作通りの着物と袴、おかま帽の金田一耕助を登場させる事。
殺し合いが行われている町にガンマンが現れ、事件を解決して去っていくというマカロニウエスタンのようなイメージを提示した事。
また原作には描写の無い、金田一耕助が探偵費用の報酬を受け領収書を書く一連のシーンを入れ、金田一耕助の真面目で几帳面な性格を誇張した事。
そして笑いのセンスを入れるよう求めた事など、映画の成功に大きく貢献する要素を提示した。

監督はスタイリッシュで洗練された映像を特長とする市川崑。
短いカットと台詞をつなげたテンポ良い演出と、さもありげな静止映像をジッと描写させる事により生まれる独特の緊張感。
犬神一族、その顧問弁護士、那須ホテルの女中、柏屋の主人、そして警察ら、それぞれの情報から徐々に事件の全貌をつかんでいく金田一耕助。
各所に散りばめられた伏線を探すのもミステリーの醍醐味だが、映画を見直す事によりわかる、さりげない伏線の張り方も見事。
まさに日本ミステリー映画の最高作と呼ぶにふさわしい出来栄えだ。

怪奇的で陰鬱な遺産相続殺人事件が発生する中、知的な石坂=金田一が飄々と動き、美しも切ないテーマ曲が映画を彩るという対比の演出も効果的だった。
「犬神家の一族」は、湖面から突き出た2本の足というインパクトあるビジュアルなどの宣伝効果もあり、17億5000万円の配収を上げるまでの大ヒットを記録した。

金田一耕助は事件は解決するが、殺人を事前に防ぐ事が無く日本一頼りない名探偵という不名誉な称号も与えられている。ちなみに金田一耕助の探偵としての殺人防御率は、主要10作品で4.2とダントツの悪さなのは有名な話だが、実はここに金田一耕助シリーズの大きな魅力があるのだ。
角川春樹は金田一耕助を、突然現れ去って行くというマカロニウエスタンのようなイメージとしたが、市川崑監督はそのアイデアにプラスして金田一耕助を「神様か天使のような存在」として、事の顛末を見届け解決して去っていくだけのものとして演出し、起こる殺人事件を客観的に見る傍観者として登場させたのだ。
劇中、佐武のお通夜の席、犬神家の不穏な空気をよそに「あの〜、紅茶いただけませんか?ボク、甘いもんが欲しくなっちゃった…」とつぶやく金田一耕助は、その典型的な演出例だ。
また石坂浩二は“金田一耕助とは古代ギリシア劇のコロスなのだ…”と語っている。中央で展開される破局へと突っ走る悲劇を、悩み悲しみながらも最後まで見届けるコロス。探偵こそは自ら犯人にならない限りは、主人公にはなれない運命を背負っているのだと…。

映画の主役は金田一耕助ではなく、地方の因習や血縁関係の因縁などの人間が生み出すドラマにあり、その事件にまつわる人物を丁寧に描写する事に主眼を置き、その結果ドラマに深みを与える事に成功したのだ。

石坂浩二演じる七代目金田一耕助は、映画のヒットと完成度の高さから、もっとも適役と言われているが、原作で描かれている金田一耕助の容貌を列挙すると、“容貌は取り立てていうほどの事はなく、小柄で、色は白く、人なつっこく、澄んだ目。クセは雀の巣のようなモジャモジャ頭をガリガリ バリバリかきむしり フケをまき散らす、貧乏ゆすり、ヒューッと口笛も吹くなどである。※容姿は劇作家の菊田一夫がモデル。名前は言語学者の金田一京助からのものと横溝正史は明かしている。

石坂浩二と並ぶ金田一耕助といえばテレビシリーズの古谷一行となるが、映画版のみで限定すると“色は白く、澄んだ目”というハンサム系の容貌からいうと、本作の石坂浩二、「悪霊島」(1981年角川春樹事務所)の鹿賀丈史、「八つ墓村」(1996年東宝)の豊川悦司がイメージに近く、また“取り立てていうほどの事はなく、人なつっこく”という事からいえば「八つ墓村」(1977年松竹)の渥美清。「悪魔が来りて笛を吹く」(1979年東映※未LD・未DVD化・ビデオ有)の西田敏行が原作に近いという事になるのだろうか…。
生前横溝正史は、「八つ墓村」の渥美清がもっとも金田一耕助のイメージに近いというような話もしていたが、渥美清はやはり寅さんのイメージが強過ぎるのではないだろうか。(2008.01.20)

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LD GALLERY
●初盤LD
1984年3月21日
パイオニア<FH090-34KD>
LD黎明期にリリースされた初盤2枚組。三角帯付。撮影されたそのままのスタンダードサイズ(1.37:1)にて収録。
角川文庫のカバーと同じ杉本一文氏によるイラストジャケットが懐かしい。
「里見八犬伝」「犬神家の一族」劇場用予告編収録。
本編前に劇場公開時と同じ角川映画のクレジットタイトルムービー(火の鳥バージョン)と角川春樹事務所第一回作品のクレジット画面が収録。
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●ニューマスター再発盤LD
1991年10月25日
パイオニアLDC<PILD-1061>
ネガテレシネによる高画質デジタル(D2)ニューマスター仕様により再発されたLD。
画面の天地をカットした劇場公開ビスタサイズ(1.5:1)による初ディスク化。スペシャルインタビュー「市川崑・映像の秘密」/劇場用予告編・特報収録。
初盤と同じく、角川映画のクレジットタイトルムービー(火の鳥バージョン)と角川春樹事務所第一回作品のクレジット画面収録。
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DVD GALLERY
●初盤DVD
2000年8月25日
角川書店/アスミック<KABD-78>
スタンダードサイズ(1.37:1)収録。初DVD化。
チャプターメニュー、キャスト/スタッフメニュー、予告編収録(※特報未収録)。
全体に青味がかった映像で画質はあまり良くない。
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→「金田一耕助の事件匣」はこちら
●デジタルリマスター版DVD
コレクターズ・エディション
(初回限定生産2枚組) 
※縮刷版復刻パンフレット封入
2006年12月8日
角川エンタテインメント<DABA-0312>
■ディスク1
・HDテレシネによるニューマスターをさらにレストアした究極のデジタルリマスター版
・劇場公開版ビスタサイズ(1.5:1)収録
・リニアPCM仕様
・チャプター/出演者一覧/制作者一覧/画面調整※最適な映像ポジションを設定可能
■ディスク2
・検証〜「犬神家の一族」はこうして作られた〜(30分)
・誕生!金田一耕助(16分)
・犬神家の一族×犬神家の一族 新作プロデューサー一瀬隆重インタビュー(16分)
・市川崑 映像の秘密(22分※ニューマスター再発盤LD版に収録と同内容)
・「犬神家の一族」復活の舞台裏(11分)
・1976年版特報/劇場予告篇、2006年版劇場予告篇収録

※「市川崑 映像の秘密」以外は新たに作られたオリジナルドキュメンタリーだが、市川崑、石坂浩二のインタビューなどは「金田一耕助の事件匣」特典ディスク、金田一耕助の事件盤(※詳細はこちら→)とダブる話も多い。

本作品編集担当の長田千鶴子により、オリジナルの映像美を限りなく忠実に再現したというその映像はセピア調のヨーロピアンテイストとなる。
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●国内盤Blu-ray
2012年9月28日
角川書店
<DAXA-4250>
−劇場公開版ビスタサイズ(1.5:1)収録
−音声・リニアPCM仕様


上記デジタルリマスター版DVDコレクターズ・エディション<DABA-0312>と同一のHDマスターを使用し、新たにブルーレイ画質・音質でエンコードした高解像度版。
オープニングタイトルの白文字タイポグラフィのくっきり感。遠景のちらつきやにじみ、動きの激しいシーンにあったモザイクノイズの無さなど、高解像度ゆえの恩恵は充分に感じられるが、SDダウンコンバート画質のDVDと比較しても驚くほどの高画質感はない。クラシカルなイメージを醸しだしているセピアな色彩設計は良しとしても、全体にシャープさに欠けボケた印象を受ける。

DVD同様、劇場公開版(1.5:1)ビスタサイズにて収録されているが、スタンダードサイズの左右黒帯そのままで天地を黒マスクでトリミングしていたDVDと違い、本ブルーレイ版は天地の黒マスクがギリギリ見える部分まで映像を拡大しているため、映像面積が大きい。
ちなみに2007年2月17日(土)日本映画専門チャンネル、2008年6月7日(土)WOWOWにて放送されたハイビジョン版は、撮影サイズでもあるスタンダード(1.37:1)サイズにて放送されていたため天地の情報量が多い。

特典映像は特報(52秒※ノンスクイーズ・ビスタ)、劇場予告編(2分10秒※スタンダードサイズ)のみSD画質にて収録。
上記デジタルリマスター版DVD コレクターズ・エディション<DABA-0312>に収録されていたドキュメンタリー等は一切収録されていない。
→犬神家の一族ハイビジョン映像へ
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→悪魔の手毬唄へ
金田一耕助登場 他作品<映画版>
●本陣殺人事件 国内盤DVD
ハイビジョンニューマスター
2001年12月21日
パイオニアLDC<PIBD-1059>
チャプター付 キャスト&スタッフ紹介(静止画) 予告篇収録。
1975年9月27日に公開されたATG(日本アート・シアター・ギルド)、高林陽一監督作品。
シネスコスクイーズ(2.35:1)収録。

本作はATG作品初の1億円の配給収入を突破するヒットを遂げた。
角川書店は本作に50万円出資しており、これが1年後に角川映画第一回作品として公開される「犬神家の一族」製作につながるきっかけともなった。

実験的、芸術的な映画製作で知られるATG作品という事もあり、のちのエンターテインメントな横溝映画とは趣を異とするが、シュールな映像美が鮮烈な印象を残す本作のファンも多い。


密室殺人事件の真相を追う金田一耕助、初登場作品。
季節はずれの雪が積もった密室殺人のトリックは原作通り忠実に描かれているが、時代設定が製作当時の1975年のため、中尾彬扮するアメリカ帰りの青年、金田一耕助はベスト風のGジャンとGパンという70年代の典型的な若者ファッションで登場する。
今となっては違和感を感じてしまう金田一耕助だが、時代設定からいえばごく自然なスタイルで、横溝正史本人も原作にほぼ忠実に映画化された事もあり、この中尾=金田一版には、いたって満足していたと聞く。

愛するがゆえの憎しみ、生きるよりも死を選ぶ人間の情念をヒシヒシと感じさせる秀作。
一柳鈴子役の高沢順子が可憐で魅力的だ。かなり前衛的な音楽は、のちに尾道三部作を撮る大林宣彦監督。

映画「悪霊島」の時代設定とちょうど同じだが、案外ヒッピー風スタイルの古尾谷正人の設定は、この「本陣殺人事件」映画版あたりからインスパイアされているのかもしれない。
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●八つ墓村 国内盤LD
1989年8月25日
パイオニアLDC<SF057-1629>
シネスコサイズ収録
●八つ墓村 国内盤DVD
2002年4月21日
松竹<DA-0150>
シネスコ(2.35:1)スクイーズ収録

1977年10月29日公開作品。「八つ墓村」といえば、まず、「たたりじゃ〜」のキャッチコピーと、頭に懐中電灯を2本くくりつけ、日本刀と猟銃を持って走り来る多治見要蔵(山崎努※原作では田治見)の狂気の姿を思い起こすだろう。

岡山県で実際に起こった津山事件(1938年)をモデルとした、この村人32人殺しの惨劇シーンは、「犬神家の一族」の湖から突き出た2本足と並んで、横溝映画の代名詞のようなシーンとなっている。
洗練された東宝金田一シリーズとの差別化を図ろうとした事かもしれないが、知的なミステリー映画という展開ではなく、八人の落ち武者斬殺シーンなどトリック撮影を多用した残酷描写と、狂った多治見要蔵やラストの鍾乳洞での美也子の恐怖描写などに、その演出の重点を置いている。
寺田辰弥(萩原健一)が荘厳な鍾乳洞で出生の秘密を探るシーンなど、同じく野村芳太郎監督の名作「砂の器」の宿命を感じさせ、一年かけたというロケ撮影もテレビドラマなどでは決して味わえない重厚な大作映画の雰囲気があり、当時の横溝正史ブームに乗って映画はヒットした。

DVDの特典映像には、ロケハン〜製作発表〜撮影快調といった時系列で作られていった劇場用予告編5種類が収録されているが、これだけでもいかに大作だったかという事がわかる。
※DVDには予告篇の他、チャプター、映画のロケ地を巡るドキュメンタリー「シネマ紀行」(15分)、キャスト・スタッフプロフィール(静止画)が収録。野村芳太郎監督と横溝正史本人の対談形式の予告編ナンバー1はかなり貴重だ。

事件の概要をただ説明するだけの印象しかない、麦わら帽子をかぶった金田一耕助役は渥美清。寅さんのイメージとどうしてもダブってしまうのがつらい所だが、宣伝効果も考えての事か、横溝正史的には顔のイメージは原作に一番近いと記している。

ちなみに、角川映画第一回作品として企画していた村川透監督の「オイディプスの刃」が角川春樹のイメージに合わないという事で流れ、続いて本作が予定されたが、こちらも角川春樹と当時の松竹とのビジネス感覚の違いから見送られていたものだった。

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●悪霊島 国内盤DVD
サウンドリニューアルエディション
2005年3月2日リリース
ポニーキャニオン<PCBE-510072>
ビスタ( 1.78:1)スクイーズ収録 本編132分 チャプター 特報収録 日本語2.0ch・5.1chドルビーデジタル収録。
鹿賀丈史が金田一耕助を演じた「悪霊島」1981年10月3日公開。
「鵺の鳴く夜は恐ろしい…。」という不気味なキャッチコピーと、ビートルズの“Let it be”が流れるテレビCM予告が強烈だった「悪霊島」。

物語は、1980年のジョン・レノン射殺事件をきっかけに、三着木五郎(古尾谷正人)が1969年に刑部島で体験した、若き日の事件を回想するという形式に変更されている。遠い眼線の主人公、三着木五郎の視点から描かれる「スタンド・バイ・ミー」のようなノスタルジックな映画でもある。

青春時代を彩った象徴として“Let it be”が印象的に流れ、青春プレイバック的な要素を前面に押し出しだしているが、「悪霊島」というタイトルと「鵺の鳴く夜は恐ろしい…。」というコピーにつられて映画を観た客は、期待ハズレという事になり、映画の内容自体はあまり評判にならなかった。
名曲“Let it be”以外、映画の印象は薄いという本作の一般的な評価がこれにあたる。

さらにDVDやハイビジョン放送では本作の肝でもある“Let it be”が権利切れにより使用できず、カバー曲への差し替えになっているというオチまでつきガッカリ感はなおさら強い。

事件を解決し風のように去っていく金田一耕助。石坂=金田一のイメージをより掘り下げた鹿賀=金田一のイメージも決して悪くはないのだが、映画の印象同様やや物足りなさを感じる結果となってしまったのは残念だ。

ビートルズの原曲がそのまま使われているオリジナルバージョンは、かなり昔の東映ビデオでリリースされている他、テレビでも何度か放送されている。
2005年10月21日金曜日の深夜(正確には土曜日)午前2時30分からテレビ東京にて、ひっそりと放送されたものもオリジナルバージョンであった。

ちなみに本DVDでは、“Let it be”はレオ・セイヤー、“Get Back”はビリー・プレストン歌唱の音源に差し替えられている。
ビリー・プレストンは、ビートルズの映画“Let it be”のルーフトップコンサートにも参加して いるが、ポール・マッカートニーのゴスペルソング“Let it be”の曲作り自体にも影響を与えたといわれている。ソックリさん声を使わなかっただけよしとしよう。
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●八つ墓村 国内盤DVD
2005年3月2日リリース
ポニーキャニオン<PCBE-510072>
ビスタ(1.78:1)スクイーズ収録 本編127分 チャプター付。

ミステリアスな雰囲気を持った豊川悦司版金田一耕助 1996年10月26日公開。
「犬神家の一族」の栄光よ再びと、待望の市川崑監督による東宝金田一シリーズとしての映画化だったが、妙にこじんまりとした作品となってしまった。

高橋和也扮する寺田辰弥が地味。気取っているばかりで何も伝わってこない浅野ゆう子はまったくのミスキャスト。岸部一徳の田治見要蔵も迫力に欠ける。
そしてなにより致命的な点は、呪われた血、怨念といった忌まわしさが映画からまったく感じられないという事。
これではいくら豊川悦司が人なつっこい金田一を熱演しても、おなじみ「よ〜しっ、わかった」の加藤武が登場しても何も残らない。

映画というのはあたれば天国だが、コケれば地獄という本当にリスクの大きいビジネスだ。
もし、本作が角川映画第一作だったとしたら、70年代の日本映画界はどうなっていたのだろうかと思わずにはいられない。
市川崑監督、当時81歳。人間年をとるにつれて徐々に体内時間が遅くなるといわれているが、晩年の黒澤明の作品のように、どこかメリハリのない、つかみどころのない映画となってしまった。
あの「犬神家の一族」を撮った監督の作品とはとても思えない…。
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●金田一耕助の冒険 国内盤LD
1987年7月21日
東宝<TLL2092>
1979年7月14日公開 角川春樹事務所製作。ビスタサイズ収録。本編97分。

大林宣彦監督作品。テレビ版「横溝正史シリーズ」(1977年)での金田一耕助役、古谷一行主演によるパロディ映画。
親しみやすさと人間くささが魅力だった古谷一行のテレビシリーズ版金田一耕助だったが、本作は完全なるナンセンスドタバタコメディで、あくまでも金田一耕助映画のオマケ的な作品。

70年代のいかにもなフザケタ感が古くさいが、金田一耕助を知れば知るほど面白い小ネタシーンも多々あり、ファンであればけっこう楽しめる。

今ではネットによるクチコミメディアの発達もあり、ハズレの映画を引くという事も減ってきたが、当時は角川映画の宣伝につられて映画館へ足を運び、期待ハズレに終わったという事も多かった。
本作で、角川春樹が印税と原作料として横溝正史に札束を渡すシーンがあるが、実はその札束の中身が白紙である事に気付いた横溝正史が、大作だが“中身はカラッポだ”というシーンなどは、それを皮肉ったセルフパロディだ。
おまけに横溝正史に“私はこんな映画にだけはでたくなかった”というオチまで言わせるし…。完全にマンガのノリだが、なかなか面白い。

また、映画に参加した壮々たるメンバーが凄い。台詞ライターにはつかこうへい、タイトルデザインは和田誠。
ATG作品「本陣殺人事件」の監督、高林陽一が釣り人役で出演している他、TV局のゲスト役で笹沢左保、床屋の客で高木彬光も登場。
また等々力警部役の田中邦衛の他、坂上二郎、東千代之介、樹木希林、熊谷美由紀(故松田優作の奥さん)、江木俊夫、小野ヤスシ、佐藤蛾次郎、南州太郎、大泉滉、車だん吉、志穂美悦子、斎藤とも子、峰岸徹、岸田森、檀ふみ、岡田茉莉子、夏木勲、三船敏郎、三橋達也などなど…。
特に、御大三船敏郎が薄くなった頭をかきながら、十一代目金田一耕助役で登場する姿は必見。
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