悪魔の手毬唄 (2009.02.22)
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「鬼首村」 "おにこべむら"…。

顔の判別が出来ないほど、焼けただれた死体。
仙人峠ですれ違う、死んだはずの老婆。
失踪した多々羅放庵とあばら屋に残る一匹のオオサンショウウオ。

前作「犬神家の一族」にも増した怪奇ムードの中、村に伝承される手毬唄になぞらえて行われていく異様な殺人事件。その殺人の裏には、二十年前の恐ろしく哀しい恨みがこめられていた。

主要な登場人物が手際よく紹介され、クレジットタイトルが表示されるまでの時間は、なんと11分。前作「犬神家の一族」にもひけをとらない鮮やかなタイミングで、村井邦彦の名曲「哀しみのバラード」が響きわたり、モダンなタイポグラフィーのオープニングクレジットが始まる。

※以下ネタバレOKの方のみドラッグ→ 嫉妬と狂った母性愛が悪魔をよびよせ、狂気を起こさせる。 二十年前の夫への恨みを忘れられず、それでもなお、夫を憎みきれない青池リカ(岸恵子)。
心ここにあらずというような素振りや天然の物忘れぶりもみせるが、実はその心の奥で、二十年前の思いを、深く心に刻み、異常なほどの嫉妬心を燃やし続けていたのかと思うと、恐ろしい…。

犯人の動機に大きく焦点をあて、「犬神家の一族」以上の悲哀を感じさせるその展開は、シリーズ最高作との呼び声も高い。
そして、前作にも増して、登場人物の心の機微を丁寧に描く市川崑演出。
特に、実直で誠実な磯川警部(若山富三郎)と、知的で飄々とした金田一耕助の、信頼とも友情ともとれるしみじみとした関係は絶品。
はかなく終わる磯川警部の思い、そして、それを優しく思いやる金田一耕助。

「磯川さん あなたリカさん 愛していらしたんですね」
「え? 何か言いましたか」

汽車の音にかき消された二人のやりとりは、心に染みる名シーンだ。
そして、このラストシーンに逸話が残る。
その質問の答えがホームの柱にあったのだ…
映画公開時から語られてきたこの逸話。実は偶然の産物だったのだが、映画の神様のなんとイキな事か。「望郷」へのオマージュともいわれているフランス映画のような、この詩情豊かなエンディングは、その後、東宝「金田一耕助」シリーズの定番ともなっていった。

加藤武演じる立花捜査主任はもとより、岡本信人(中村巡査)、大滝秀治、三木のり平、その奥さん役、沼田カズ子(※女優さんではなく髪結いのスタッフ)、常田富士男等、脇の登場人物一人ひとりが、物語に、役柄に、見事にはまっているのも見逃せない面白さだ。司咲枝役の白石加代子、いつもの伏せ目がちの演技も怖いし… (2009.02.22)

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LD GALLERY
●初盤LD
1987年10月21日
東宝<TLL2348>
CLV3面、撮影時のフル画面、スタンダードサイズ(1.37:1)にて収録。本編2時間23分18秒オリジナル版。
チャプター及び予告篇未収録。ジャケット中面には、解説とストーリー掲載。
全体に平板で明るい映像。2007年8月24日BS-iでHV放送されたマスターは、この初盤LDで使用された旧マスターを元としていると思われる。
※ちなみに2007年6月17日にBS-iでHV放送された際には地震テロップが挿入されてしまった。
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●再発盤LD
1996年10月1日
東宝<TLL2480>
CLV3面、ニューマスター版。撮影時のフル画面、スタンダードサイズ(1.37:1)にて収録。本編2時間23分18秒オリジナル版。チャプター及び劇場予告篇収録。ジャケット中面に解説及び製作余話掲載。
※公開当時の劇場用ポスター等各種掲載。 「ごめんくださりませ おはんでござりやす… お庄屋さんのところへ戻ってまいりました…」のシーンはやはりインパクトが強いせいか、メインビジュアルとしてもっとも多く使われている。
●悪魔の手毬唄 エピソード
シリーズ全5作すべてに出演している脇役は草笛光子、加藤武、大滝秀治、三木のり平、小林昭二の5人。
「よ〜しっ、わかった!」の加藤武は、前作「犬神家の一族」では橘警察署長、本作では「立花捜査主任」、以降「八つ墓村」(1996年東宝版※→詳細はこちら)まで、等々力警部として登場する。
活弁士だった青池リカの夫が、職を失うきっかけとなるのが、本格的トーキー映画で、日本で始めて字幕スーパー付で上映された「モロッコ」の登場だったが、高い著作権料を支払ってまで、劇中に「モロッコ」の名シーンを挿入したのは、市川崑監督のこだわりだったという。(現在、「モロッコ」は、日本ではパブリックドメインの扱いだが…)
金田一が老婆とすれ違う仙人峠の坂道は、冬の撮影だった為、凍っていたという。そのため、石坂浩二の履く下駄の裏には、スパイクのように釘が打ってあった。
石坂浩二=金田一のモジャモジャ頭は、本作までは地毛だったが、モジャモジャにするのが大変なので、次作「獄門島」からカツラになった。
また、金田一が持ち歩いていたカバンは石坂浩二本人の所有物。神戸の骨董品屋で購入した年代物で、「獄門島」まで使われた。その後、そのカバンは小道具係が記念に持って行ってしまったとの事。
ちなみに、撮影時、中に入っていたものは、下着、双眼鏡、薬、磁石、万年筆、手帳、お米などだった。
脚本の久里子亭は市川崑と夫人の和田夏十による共同ペンネームで、アガサ・クリスティをもじったもの。
※ジャケット中面解説より流用
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DVD GALLERY
●金田一耕助の事件匣
市川崑×石坂浩二金田一耕助シリーズDVD-BOX
※特典ディスク「金田一耕助の事件盤」
※特典ブックレット
「金田一耕助讀本(44P)」封入
2004年5月28日<TDV2746D>
権利の関係で「犬神家の一族」はセット化されていないが、市川崑×石坂浩二の金田一耕助シリーズ4作品。「悪魔の手毬唄」(1977年)、「獄門島」(1977年)、「女王蜂」(1978年)、「病院坂の首縊りの家」(1979年)と特典ディスク「金田一耕助の事件盤」をDVDボックス化。 本編スタンダードサイズ(1.37:1)収録。
東宝製作のシリーズ第二作「悪魔の手毬唄」はシリーズ最高作ともいわれている。お約束のセリフや、三木のり平扮する夫婦の登場など、シリーズならではの面白さも随所に見られ、横溝正史ブームの先導役ともなった。
1万セット限定ですぐに完売したが、2006年版「犬神家の一族」公開に合わせるように再リリースされた。

■特典ディスク「金田一耕助の事件盤」
・市川崑+石坂浩二特別対談「名探偵・金田一を語る」※DVD-BOXのための撮り下ろし (45分)
・ 1977年放送「われらの主役」石坂浩二(25分)
・加藤武が語る「よしっ、わかった!インタビュー」※DVD-BOXのための撮り下ろし(14分)
・世田谷文学館所蔵映像「横溝正史の世界」 (22分)
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●金田一耕助の事件匣 封入盤DVD
2004年5月28日<TDV2746D-1>
チャプターメニュー、日本語字幕収録。本編2時間23分18秒オリジナル版。
撮影時のフル画面、スタンダードサイズ(1.37:1)にて収録。
解説書によると、DVD収録の画角サイズは、“当時、撮影は東宝ビスタサイズを意識して行われていたものの、東宝ビスタサイズにする事で、人物の頭が切れる、必要な情報の一部が見えなくなる等の箇所が出てくることが判明し”、“本編サイズは全て、撮影時のフル画面であるスタンダードサイズにて収録”するという決定によるもの。
再発盤LDとマスターは同じと思われるが、天地に少しだけ黒画面が表示される。
初盤LD及びBS-i HV放送版の旧マスターと比較しても発色はかなり良い。ブルーレイにてHV発売されるのは、おそらくこのマスターが基本となると思われる。

特典映像として、劇場予告篇、劇場パンフレットより(原作者からのメッセージ、撮影余話、鬼首村略図、スタッフ・キャストリスト)抜粋静止画文字情報、スナップコレクション(メイキングスチール37枚)が収録。 ※ジャケットサイズ3つ折解説書封入。
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