ジャパニーズ・サムライ・イン・アメリカ
日本の侍が突然、現代のロスに現れたら…?
「SFソードキル」は、SF映画の定番ともいえる
"本来存在すべき場所ではない時代や世界へまぎれこんでしまった者の悲劇"を描いた超怪作ムービーである。
製作はエンパイア・ピクチャーズ。
1983年に設立、低予算ながら愛すべきB級SFホラー作品を専門に制作した映画会社。設立者のチャールズ・バンドは最盛期には"80年代のロジャー・コーマン"とも呼ばれるまでになったが、1990年に資金難から倒産してしまった。(チャールズ・バンドは、その後も懲りずにフルムーン・ピクチャーズを設立)
「SFソードキル」は、そんなエンパイア・ピクチャーズの第1回製作作品でもある。
監督はラリー・キャロル。
サムライがロスのストリートギャングを斬り捨てるシークエンスなど、「用心棒」桑畑三十郎の"腕は今見せる"のシーンをイメージしているのは明らか。寿司レストランでも"トシロー・ミフネだわ!"と驚かれるなど、随所に黒澤映画の影響がみられる。
主役のサムライ タガ・ヨシミツを演じるは藤岡弘、。
(※「藤岡弘」は現在「藤岡弘、」と、名前の最後に句読点を含めるように改名している)
本作の見所でもあるサムライ及び武士道、また古式日本の描写に関しては藤岡弘、の強いアドバイスに拠るところが大きく、その意見は脚本の改訂にまで及んだという。
本作品が80年代にアメリカで巻き起こっていたカンチガイ、ジャパニーズ・ニンジャ映画ブームとは一線を画し、日本人が見てもその描写に違和感がないのは彼の功績によるものである。
海外の資料によると藤岡弘、は"日本のTVスター"とクレジットされているが、三船敏郎や後の渡辺謙にも劣らぬ堂々としたサムライぶりは、ソニー千葉にも負けない国際スターとしての風格を感じる事ができるのだ。
そう、まさにもう一人のラストサムライなのである。
時は1552年、日本。
マカベ一族の侍、タガ・ヨシミツは、捕われた妻チドリ(コバヤシミエコ)を救うため単身、敵の元へ向かうが卑怯な手段により妻を失い、自らも矢を受け、湖底に沈んでしまう。
・・・
サムライが目覚めたのは、それから432年後の現代。遠い異国の地アメリカ、ロサンゼルスだった。氷漬けの冷凍冬眠状態で発見された彼は、カリフォルニア低温外科療法研究所に運ばれ、蘇生されたのだ。
ヘリコプターやテレビに映るヘビメタバンド、街を走る自動車にカルチャーショックを受けるヨシミツ。
値打ちものの日本刀を盗もうとした研究所職員を正当防衛から斬り、そのまま研究所を脱出してしまうヨシミツ。
そして、威風堂々とロスの街をゆくジャパニーズ・サムライ、ヨシミツは老人にたかるストリートギャングを一刀のうちに斬り捨ててしまうのだった。
戦国時代を生きていたヨシミツにとって、ここにいるべき場所はない。
助けた老人との心の交流も束の間、殺人犯として警察から、そしてスキャンダルをおそれた研究所からも追われる身となってしまうのだ。
いかにして生きるか、いかにして死ぬか。
ただひとりの理解者であった女性記者クリスに亡き妻の面影をみたヨシミツは…。 |